■力とベクトルと矢印

さて、次は方向を持った量、ベクトルとして
力の量の考える、というルールです。

すでに第二法則、運動の法則のところで、
力には方向がある、という事を書きました。
その結果、力で推された物体は、その力の向きに運動するわけです。
さらに力にはマイナスの向きのものがあり、
プラスのそれとは打消しあう、というのも何度も説明してます。

こういった「向きのある量」をベクトル(Vector)と呼びます。
英語だとヴェクターといった感じの発音ですね。
ちなみに元はラテン語で、運搬するもの、といった意味です。



力を考える場合、必ずその向きを考えないとエライ事になります。
戦車砲を撃ちだす火薬の力の向きが逆なら、砲弾は飛んでゆかないどころか、
自分の砲塔を吹き飛ばしてしまう事になりかねません。

どんなに強力な力でも、正しい向きを向いてないと意味が無いわけです。



そもそも向きを持った量ってのは何?というのを理解するには、
逆に向きのない量というものを考えてみるのも手です。

例えば温度。
今日は35度ですって、暑いザマスね、と聞いて、
どっち向きに?という質問をする人はいないでしょう。
こういった方向の要素のない量はスカラー(Scalar)と呼びます。
で、こっちの語源は知りません(笑)。

が、ボールを強く蹴り飛ばして、と言われた場合は、
どっち向きに?と聞いたほうが無難でしょう。
PKで相手のゴールと逆向きにボールを蹴ったのでは、
永遠に得点は望めませんし、向きを持たせずに
ボールを蹴ることは不可能ですから。
こういった向きを持った力の量、それがベクトルとなります。

で、この向きを持った力というのを考えるのに、
矢印で方向を示し、その後ろの線分の長さでその量を示すと、
ステキに判りやすいのではないか、
とニュートンさんは気が付いたのでした。
よって、力のベクトルは矢印と線分を使って表すのが普通となっています。



こんな感じですね。
矢印で力の向き(プラス&マイナス)を示し、
その後ろの線分の長さで力の大きさを表しています。

ただし、これだけではいろいろ問題が出てきます。
たとえば、どっち向きがプラスなの?というのは特に決まりが無く、
どの長さを1とするの?というのも同じです。
つまり、人により場合によりバラバラの表記法が待っています。

さらに今までは右か左、
水平方向の力の向きしか考えてませんでしたが、
実際は斜め、さらには垂直方向への力の向きも存在するはずです。
それらの角度はどうやって表せばいいのか…。

でもって、これらの問題を解決するには、
実に簡単な方法があったりするので、
今後はそれを採用してゆきませう。
それがグラフの座標軸にベクトルの矢印を乗せてしまう、です。

グラフなら水平方向の力の大きはX軸の、
垂直方向の力の大きさY軸の、
それぞれの座標を読み取る事で判りますしね。

さらに力のベクトルは常に直線になりますから(運動法則を参照)、
グラフ上ではY=X といったような単純な一次関数となるわ、
座標軸と直角三関係を作れるわで(三角関数&ピタゴラスの定理が使える)、
計算上、極めて扱いやすい存在となります。
まさにやりたい放題ですね(笑)。

とりあえず、ベクトルの矢印を実際に座標軸に乗せてみたのが下のグラフです。
まず、力のかかる物体を原点、XもYも0となる軸線の交点に置きます。
そして、それにかかる力の大きさと向きに対応した
ベクトルの矢印をグラフ上に書き込むのです。

矢印の向きが力の向きで、さらにグラフの目盛りが力の大きさを示します。
当然、マイナス方向(左&下)に向う矢印がマイナスの力、
プラス方向(右&上)に向う力がプラスの力になります。



ニュートン力学のグラフなら、力(F)の単位はkg・m/ssですから、
目盛りはその力の単位に対応しています。

よって、上のグラフでは、原点にある物質に対して
1kg・m/ss、-1kg・m/ssで二つの力(F)が加わっている、という事になります。
当然、両者の力(F)は完全に打ち消し合いますから、
原点にある物体は動かない、慣性の状態に置かれる、
というのも、ここから読み取れる事になります。

これなら単純でわかりやすいですね。


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