■正義じゃないけど力である

とりあえず物体の変化の量を計測するのがニュートン力学の基本です。

よって、ここで「力の量」を考えないといけません。
すなわち力とは何か、どうやってその「量」を求めるのか、
を考える必要が出て来るのです。

力、というとさまざまな意味を持つ日常用語ですが、
ニュートン力学においては、物体を動かすのが力という量だ、
という事になってます。

例えば、重力もその名のとおり力です。
これは地球中心方向に向う力であり、
つまり、地面に向けて物体を引っ張り続ける力です。
よって物体を上に持ち上げる、というのはある意味、
地球の重力との力比べなんですね。




次回の作用反作用の法則で少し詳しく見ますが、
ジェットエンジンは単純に後ろ向きの力を生み出し、
その反作用を推力としています。

その推力に対抗する空気抵抗などもまた力でして、
航空機は常にこの前向きの力(推力)と
後ろ向きの力(抵抗力)を、エンジン出力でバランス取りながら前進しています。

当然、エンジン出力を上げれば加速され、下げれば減速します。
そしてちょうどいいところ、推力と抵抗力が吊り合うプラスマイナス「0」のところで止めれば、
これは機体にかかる前後の力が「0」となって、等速運動に入るわけです。




力の量を考える前に、まず、基本に帰ってみましょう。
最初に断ったように、ニュートン力学における「量」の基本要素は3つ、
質量(m)、長さ(L)、時間(t)のみですから、力は入ってません。
となると、その3要素から計算で求められる量だということです。
では、どういった計算になるのか。

まず、力(F)は先に見たように蓄積される量だ、というのが重要です。
物体に力を加え続けると蓄積されるのが運動量(mv)だったわけです。
そして運動は時間の経過を伴い、蓄積はその間に行われます。

ここで同じように時間の経過で蓄積される量として、移動距離を思い出しましょう。
移動距離=速度×時間
ですね。
ここから運動量と力の間には、以下の関係が成立すると考えられます。

運動量(mv)=力(F)×時間(t)


力はForce の頭文字を取ってFが略号なのですが、
理由は不明ながら大文字表記の場合が多いので、
この記事でもその表記を採用しておきましょう。

後はこの式を力(F)を求める形、力(F)=〜の
形に変形してしまえばいいわけだ、と思いついたらしめたもの。
ここでは左右の式を時間(t)で割り算してやれば、
右辺から時間が消えて力を求める式になりますね。

運動量(mv)÷時間(t)=力(F)

はい、これが力(F)の量を求める式となります。
運動量を時間で割り算(単位時間で微分)すると力の量になる、
という意味の式ですね。

これは新しい「量」ですから、最後に力の単位を考える必要があります。
単位の求め方は速度の所でみたように、
計算式のまま、各単位を並べるだけです。

力(F)の場合は、ちょっと長いですが、
質量(kg)×速度(m)(距離(m)÷時間(s))÷時間(s)ですから、



となります。

力の単位はキログラム・メートル・毎(まい)・秒秒(びょうびょう)という、
なんだか場末の密教の呪文みたいな長さになってしまいました…。

ただし国際単位(SI)と呼ばれる単位系があり、
近年はこちらで記述するべし、という事になってるようで、
この場合、力の量の単位にはニュートン、記号Nが使用されます。
1kgm/ss=1N(ニュートン)ですね。

ちなみにkgf、という力の単位が使われる事がありますが、
これは重量の単位kg&kgfを基準にした力の単位で、kg・m/ssともNとも全く別モノです。
この場合、換算が必要で、1N=9.80665Kgf となります。
この単位だと重さの数字がそのまま力の数字になるため、3000kgの重量の機体に架かる重力の
“力の大きさ”はそのまま3000kg、あるいは3000kgfであり、この分かりやすさから、
ロケット、あるいはジェットエンジンの出力などに使われてたりします。
ただし、ここまで見てきた数式では、この単位で答えは出ないため、
その換算の手間を考えると、使いどころは難しい単位だと思ってください。
この記事中では、基本的には使いません。

とりあえず運動量(mv)を単位時間で割り算(微分)すると力(F)になり、
逆に力(F)を全時間分蓄積(積分)すると運動量(mv)になるという流れ、

力(F)→時間と共に蓄積(積分)→運動量(mv)
力(F)×時間(t)=運動量(mv)

運動量(mv)→一定時間ごとに分割(微分)→力(F)
運動量(mv)÷時間(t)=力(F)


これはキチンと理解しておいてください。

ちなみに積分とか微分とかの言葉が出てくると
ちょっと身構えるかもしれませんが、
すでに見て来たように、基本的には単なる掛け算と割り算です。
この辺りも、後で少し詳しく説明する予定。

とりあえず、力を集めると運動量になり、
運動量を細分化すると力になる、というのは重要なので、
何となくでいいから、覚えておいてください。

ちなみに普通に教科書に出てくる式、

質量(m)×加速度(a)=力(F)

は、次のページで加速度という量を見てから説明しましょう。
両者は全く同じ式の変形に過ぎないんですけども。


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