■慣性の法則の秘密

さて、次に慣性の法則で生じる運動の「量」は何かを考えましょう。
これを求めるのがニュートン力学なわけですから。

とりあえずページが変わったので、もう一度、基本図を載せておきます。



まず、最初の静止状態の場合、
量としては質量と長さ(寸法)があるのみです。

そこから何も変化が生じない以上、時間は意味がありませんし、
当然、速度も生じません。
なので、この段階では計算で求める量は存在せず、
ニュートン力学は全く意味を持ちません(笑)。
まあ、全く動かない物体が相手ですから、当然ですが…。

が、これが力で推されて、等速直線運動を始めると話が変わります。
移動してる以上、運動に伴って移動距離(長さ)と時間の変化(量)が生じ、
前回の記事の最後で見た重要な量、速度が生じるのです。

そして、その結果、質量と速度によって
もう一つ重要な「量」、運動量が発生することに。
さあ、計算で求められる、新しい量がでてきましたよ。
こうしてさまざまな「量」を計算から求め、それを比較したり、
予測したりするのが、ニュートン力学ですから、ここからが本番です。

この「運動量」または「力積」と呼ばれる量は、
これまたニュートン力学の基本中の基本となるものです。
本記事中では運動量の名前を使いますが、力積とも呼ばれる理由は
また後で説明する事になる予定です。
これは質量と速度で維持される量で、ここでついに、
速度の計算で除け者にされた質量が計算に投入され(笑)、
基本3要素の量が、全て計算に使われる事になるのです。

とりあえず、運動量(momentum)は速度と質量の掛け算、

質量(m)×速度(v)=運動量(P)(=力積)

という式で求められる「量」であり、
ニュートンが最初に求めた力学の量でもあります。
計算される量はkg×m/sですから、単位はkg・m/sですね。

ちなみに運動量は英語ではmomentumなんですが、
なぜか略称にはPが使われます。
理由は知りません(笑)。

ただし、Pと書くよりも、質量(m)×速度(v)の略称、
mvで表記される事の方が多いですし、
その方が判りやすいので、この記事中ではmvを略号とします。
ついでに前回書き忘れてしまいましたが、速度の省略記号は
 velocity の頭文字をとってvとなります。

この「運動量(mv)」ってのは何の意味がある量なの?というと、
速度や質量だけでは測定できない
運動の内容を計測する量、という事になります。

例えば、物体が秒速10mの速度で進んでる運動を考えます。
この時、物体が1kgの質量の場合と、100kgの質量の場合では
同じ運動とは言いがたいものがあるよね、というのは簡単に想像がつくでしょう。

そして、その逆、同じ1kg質量の物体でも、
時速が1km のと時速100km のとでは、
その運動の内容が全く異なるはずだ、という事も理解できるはず。
これらの違いを見て比較するための量が運動量なのです
これは速度に質量を掛け算(積分)することで、それぞれの蓄積量を見ています。

とりあえず動いてる物体は、必ず運動量(mv)を持つ、
そして掛け算で求められる量のため、質量、速度、どちらがの量が増加しても
大きくなる、という事を覚えておいてください。

が、実は運動量(mv)はさらにもう一つの重要な特徴を持ちます。

それはこの「量」は物体間を移動し保存される、という事です。
これが、慣性の法則から産み出される新たな法則、運動量保存の法則となります。

それってどういう意味?というのを少し考えてみましょう。


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